天気図の解析練習①(準備編)
3回に分けて天気図の見方をまとめてみたいと思います。
1回目は天気図を解析する準備として、天気図の種類や入手法などについてです。
私は山登りをするので、私が天気図を解析する理由は、これからの天気・天候の変化を見るためです。
山に行く直前だけ天気図を見るのではなく、解析を普段から継続することで作業に慣れるだけでなく様々な勘が養われます。
気象は連続して変化していくので、この先の予測資料だけを見るのではなく数日前からの変化を追跡することも大切だと思います。
例えば、一昨日はバイカル湖の南にあったトラフが沿海州に南東進するというプロセスを追跡することで、トラフの盛衰を見ることができます。これでトラフが深まるということが分かれば、低気圧の発達を判断する材料の一つになります。これは日々の天気図の変化を追うことで可能になります。
また、天気を予測することが最終目標だとしても、基本は実況解析(現在の天気を理解すること)です。
実況の解析には基本的な作業が含まれるし、そもそも実況は資料は種類も多いからです。
レーダーエコーや気象衛星画像を見ると、「天気はどうなる?」という問いに対する「答え」が分かります。実況解析で、なぜこの答えになったのかを考えることが、明日以降の予測をする実力を養ってくれます。
掲載範囲や予測時間に応じて凡そ90種類の天気図があります。
天気図は大きく実況図(解析図を含む)と予測図に分類できます。850hPaより上空の天気図を高層天気図と呼ぶこともあります。
気象予報士の実技試験でよく出題される天気図は次の通りです。
ASAS(アジア太平洋域実況天気図)
実況の地上天気図です。テレビや新聞でおなじみのSPAS(速報天気図)は日本付近中心の天気図で、試験では出題されません。
AUPQ35(アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図)
・1枚に300hPa面と500hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AUPQ78(アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図)
・1枚に700hPa面と850hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AXFE578(極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図)
・1枚に500hPaの高度・渦度と、850hPaの温度・風と700hPaの上昇流が掲載されている解析図です。
FSAS24/48(アジア太平洋域予想天気図)
・地上天気図の予想図です。
・24時間先(FSAS24)と48時間先(FSAS48)があります。
FXFE502/504/507
・1枚に500hPa高度・渦度の予想図と、地上気圧・降水量・風の予想図が掲載されています。
・502には12時間と24時間の予想図、504には36時間と48時間の予想図、507には72時間予想が掲載されています。
FXFE5782/5784/577
・500hPa気温、700hPa湿数の予想図と、850hPa気温・風、700hPa鉛直流の予想図が掲載されています。
・5782には12時間と24時間の予想図、5784には36時間と48時間の予想図、577には72時間予想が掲載されています。
FXJP854
・850hPaの相当温位・風の予想図が掲載されています。
・1枚に12時間、24時間、36時間、48時間の予想図が掲載されています。
以上の天気図の名称を覚える必要はまったくありません。
どの気象要素を表現した天気図があるのかを頭に入れておくことが大切です。これは暗記するのではなく、日々の解析を繰り返すことで自然と身についていきます。
天気図は決まった時刻(観測時刻)のものが発表されますが、気象庁での解析時間を要するために実際に配信されるのはこれよりも数時間後になります。
ASAS
・観測時刻は3、9、15、21時の4回
・発表時刻は、観測時刻の約2時間半後
高層天気図
・観測時刻は9、21時の2回
・発表時刻は、観測時刻の約3時間半後
高層天気図は世界で同一時刻に観測されています。そのため、通常はUTCという協定世界時で表記され、00UTC(通称マルマルUTC)と12UTC(通称イチニーUTC)に観測することになっています。
UTCの時刻に+9すると日本の時刻になります。
例)UTC 1月9日00UTC →日本 1月9日9時
天気資料をダウンロードして入手するには、無料サイトと有料サイトがあります。
前項であげた天気図であれば、無料サイトから入手可能です。過去の天気図や、より専門的な予測資料の入手には有料サイトが便利です。
私が日常的に使っているサイトをあげておきます。
【北海道放送(HBC)】
http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html
最新の天気資料が掲載されているので、日々の解析に利用しています。
過去資料も2週間分保存されています。普段の解析練習をするには、本サイトだけで十分です。
【Sunny Spot】
https://www.sunny-spot.net/chart/chart_archive.html?area=0
過去2年分の天気資料が掲載されているので、少し前の天気図を見たいときに利用しています。
【日本気象】
https://n-kishou.com/ee/exp/exp.html
気象予報士になってからは、解説資料(短期予報解説資料、週間予報解説資料)や週間天気図を見るのに利用しています。
【気象庁】
レーダーエコーと衛星画像をダウンロードするのに使っています。
いずれも直近の5日分が保存されています。5日を経過すると削除されてしまうので、高層天気図の発表時刻に合わせた9時、もしくは21時の画像を保存しています。
レーダーエコー
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/imgs/radar/000/ファイル名
赤外画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/infrared/1/ファイル名
可視画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/visible/1/ファイル名
水蒸気画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/watervapor/1/ファイル名
ファイル名は
「西暦」+「月」+「日」+「時刻(24時間)」+「-00.png」です。
例えば2019年1月9日9時ならば「201901090900-00.png」となります。
【ウェザーニュース Labs Channel】
http://labs.weathernews.jp/data.html
有料サイト(月額324円)です。2000年以降のあらゆる天気資料に加え、GSM、MSMのGPVも入手可能です。
天気図を見るたびに印刷していると、紙とトナーをどんどん消費していきます。エコの観点からも、印刷は必要最小限に抑制すべきです。
「必要最小限な天気図」とは、紙に出力しないと利用しづらいものです。私はAUPQ35(強風軸を色ぬりするため)ぐらいで良いと思いますが、AXFE578(500hPaトラフを記入)やFXJP(風の循環や暖湿気の流入を記入)があっても良いでしょう。
印刷しない天気図はモニターで閲覧します。印刷では読み取りにくい細かい表示も、拡大して見ることもすぐにできます。
スマホで学習されている方は、21.5インチ程度のモニターの購入をお勧めします。
天気図の解析を始める前に知っておくべきことをまとめました。
2回目は「天気図の読み方」、3回目は「天気図解析の実際」をまとめる予定です。
私自身まだ修行を始めて間もないので、誤りなどに気付かれた方はご指摘いただけると幸いです。

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1回目は天気図を解析する準備として、天気図の種類や入手法などについてです。
私は山登りをするので、私が天気図を解析する理由は、これからの天気・天候の変化を見るためです。
山に行く直前だけ天気図を見るのではなく、解析を普段から継続することで作業に慣れるだけでなく様々な勘が養われます。
気象は連続して変化していくので、この先の予測資料だけを見るのではなく数日前からの変化を追跡することも大切だと思います。
例えば、一昨日はバイカル湖の南にあったトラフが沿海州に南東進するというプロセスを追跡することで、トラフの盛衰を見ることができます。これでトラフが深まるということが分かれば、低気圧の発達を判断する材料の一つになります。これは日々の天気図の変化を追うことで可能になります。
また、天気を予測することが最終目標だとしても、基本は実況解析(現在の天気を理解すること)です。
実況の解析には基本的な作業が含まれるし、そもそも実況は資料は種類も多いからです。
レーダーエコーや気象衛星画像を見ると、「天気はどうなる?」という問いに対する「答え」が分かります。実況解析で、なぜこの答えになったのかを考えることが、明日以降の予測をする実力を養ってくれます。
天気図の種類
掲載範囲や予測時間に応じて凡そ90種類の天気図があります。
天気図は大きく実況図(解析図を含む)と予測図に分類できます。850hPaより上空の天気図を高層天気図と呼ぶこともあります。
気象予報士の実技試験でよく出題される天気図は次の通りです。
実況図
ASAS(アジア太平洋域実況天気図)
実況の地上天気図です。テレビや新聞でおなじみのSPAS(速報天気図)は日本付近中心の天気図で、試験では出題されません。
AUPQ35(アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図)
・1枚に300hPa面と500hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AUPQ78(アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図)
・1枚に700hPa面と850hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AXFE578(極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図)
・1枚に500hPaの高度・渦度と、850hPaの温度・風と700hPaの上昇流が掲載されている解析図です。
予測図
FSAS24/48(アジア太平洋域予想天気図)
・地上天気図の予想図です。
・24時間先(FSAS24)と48時間先(FSAS48)があります。
FXFE502/504/507
・1枚に500hPa高度・渦度の予想図と、地上気圧・降水量・風の予想図が掲載されています。
・502には12時間と24時間の予想図、504には36時間と48時間の予想図、507には72時間予想が掲載されています。
FXFE5782/5784/577
・500hPa気温、700hPa湿数の予想図と、850hPa気温・風、700hPa鉛直流の予想図が掲載されています。
・5782には12時間と24時間の予想図、5784には36時間と48時間の予想図、577には72時間予想が掲載されています。
FXJP854
・850hPaの相当温位・風の予想図が掲載されています。
・1枚に12時間、24時間、36時間、48時間の予想図が掲載されています。
以上の天気図の名称を覚える必要はまったくありません。
どの気象要素を表現した天気図があるのかを頭に入れておくことが大切です。これは暗記するのではなく、日々の解析を繰り返すことで自然と身についていきます。
天気図の発表時刻
天気図は決まった時刻(観測時刻)のものが発表されますが、気象庁での解析時間を要するために実際に配信されるのはこれよりも数時間後になります。
ASAS
・観測時刻は3、9、15、21時の4回
・発表時刻は、観測時刻の約2時間半後
高層天気図
・観測時刻は9、21時の2回
・発表時刻は、観測時刻の約3時間半後
高層天気図は世界で同一時刻に観測されています。そのため、通常はUTCという協定世界時で表記され、00UTC(通称マルマルUTC)と12UTC(通称イチニーUTC)に観測することになっています。
UTCの時刻に+9すると日本の時刻になります。
例)UTC 1月9日00UTC →日本 1月9日9時
天気資料の入手方法
天気資料をダウンロードして入手するには、無料サイトと有料サイトがあります。
前項であげた天気図であれば、無料サイトから入手可能です。過去の天気図や、より専門的な予測資料の入手には有料サイトが便利です。
私が日常的に使っているサイトをあげておきます。
【北海道放送(HBC)】
http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html
最新の天気資料が掲載されているので、日々の解析に利用しています。
過去資料も2週間分保存されています。普段の解析練習をするには、本サイトだけで十分です。
【Sunny Spot】
https://www.sunny-spot.net/chart/chart_archive.html?area=0
過去2年分の天気資料が掲載されているので、少し前の天気図を見たいときに利用しています。
【日本気象】
https://n-kishou.com/ee/exp/exp.html
気象予報士になってからは、解説資料(短期予報解説資料、週間予報解説資料)や週間天気図を見るのに利用しています。
【気象庁】
レーダーエコーと衛星画像をダウンロードするのに使っています。
いずれも直近の5日分が保存されています。5日を経過すると削除されてしまうので、高層天気図の発表時刻に合わせた9時、もしくは21時の画像を保存しています。
レーダーエコー
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/imgs/radar/000/ファイル名
赤外画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/infrared/1/ファイル名
可視画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/visible/1/ファイル名
水蒸気画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/watervapor/1/ファイル名
ファイル名は
「西暦」+「月」+「日」+「時刻(24時間)」+「-00.png」です。
例えば2019年1月9日9時ならば「201901090900-00.png」となります。
【ウェザーニュース Labs Channel】
http://labs.weathernews.jp/data.html
有料サイト(月額324円)です。2000年以降のあらゆる天気資料に加え、GSM、MSMのGPVも入手可能です。
天気図は印刷するべきか?
天気図を見るたびに印刷していると、紙とトナーをどんどん消費していきます。エコの観点からも、印刷は必要最小限に抑制すべきです。
「必要最小限な天気図」とは、紙に出力しないと利用しづらいものです。私はAUPQ35(強風軸を色ぬりするため)ぐらいで良いと思いますが、AXFE578(500hPaトラフを記入)やFXJP(風の循環や暖湿気の流入を記入)があっても良いでしょう。
印刷しない天気図はモニターで閲覧します。印刷では読み取りにくい細かい表示も、拡大して見ることもすぐにできます。
スマホで学習されている方は、21.5インチ程度のモニターの購入をお勧めします。
最後に
天気図の解析を始める前に知っておくべきことをまとめました。
2回目は「天気図の読み方」、3回目は「天気図解析の実際」をまとめる予定です。
私自身まだ修行を始めて間もないので、誤りなどに気付かれた方はご指摘いただけると幸いです。

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