合格できなかったら・・・

試験に合格できなかったのには、何らかの理由があります。次回に向けて効率的な学習ができるよう、しっかりと要因分析をして対策を講じましょう。
現実に向き合うのは辛く面倒な作業ですが、記憶が新しいうちにやってしまうのが効果的です。
原因を分析する
まずは試験を振り返る
不合格だった試験を見返し、なぜ合格点が取れなかったのか、その原因を分析します。次の3つぐらいに分類できるでしょう。
①問題に歯が立たなかった
②時間が足りなかった
③勘違いをした
これらは表面的な原因です。過去問題をこなしてきた方であれば、基本的な知識は蓄積されているはずです。それがなぜ、試験場で要領よく引き出すことができなかったのか、その裏に潜んでいる真の原因に迫りましょう。
では、順に見ていきましょう。
①問題に歯が立たなかった
これまでの学習で学習漏れがあったり、苦手なテーマを放置していた可能性があります。
私の体験では、得意なものばかり繰り返して、苦手なものは取り組むのが面倒で後回しにするということがありました。
例えば、台風のもたらす被害について整理しないまま今日まで来てしまった。あるいは、教材が不足しているという理由で、エマグラムの解析練習をあまりやってこなかったというように、不得意な分野が残っていれば、それを全て列挙します。
項目をいくつか挙げておきます。
□気象現象別の特徴
・低気圧(南岸、日本海、寒冷)
・ポーラーロウ
・台風
・前線(梅雨、秋雨、沿岸)
・大雪(日本海側、太平洋側)
□図の読解(エマグラム、鉛直断面図、レーダーエコーなど)
□図の解析(前線、等値線、トラフ、強風軸など)
□衛星画像
□計算問題(じょう乱の移動速度など)
□警報・気象情報
□用語、地名など
②時間が足りなかった
問題を解くプロセスを単純化すると、次の3ステップになります。
「問題文(図)を読む」→「考察する」→「解答文を作成する」
そして、解答文の作成に至るまでに、次の処理を行います。
【問題文(図)を読む】
・問題の意図を読み取る
・天気図など、与えられた資料を読む
【考察する】
・現象を理解する
・該当する気象ロジックを導く
・解答の文型を考える
【解答分を作成する】
・解答する(作図する)
時間が足りなかったということは、このいずれかの処理能力が劣っていたことを意味します。その原因として「習熟の不足」「知識の体系化不足」が考えられます。
③勘違いをした
勘違いが多い方は、勘違いを起こす傾向があるはずです。
私の場合、家で過去問を解いていて単純な間違いを多発していることに気がつきました。例えば、風向きの読み違えが多く、「西風」と答えるところを「東風」とやっていました。
焦っていると漢字の書き違いもして、「対流雲」を「帯流雲」と書いたこともあります。また、問題文に「小数点ひと桁で答えよ」とあるのに、2桁目まで出したこともあります。
前項「②時間が足りなかった」のどの処理段階で発生するのか、分析してみましょう。
対策を講じる
原因分析を通して自分の弱点が特定できたら、次はそれをつぶす対策を考えます。
教材を決める
これまで使ってきた教材では物足りなければ、自分の弱点を埋めてくれる教材を探して、早い段階で学習計画に取り込みます。試験が近づくほど時間の余裕はなくなるので、弱点対策は早期に行います。
参考書を探している時間も勿体無いので、いくつか挙げておきます(※)。
※気象予報士関連の書籍は10年以上前に出版されたものに良書が多く、現在では書店で入手できないものが多くなっています。入手できない場合は、地元の図書館で探してみてください。
【気象現象をサラッと学びたい】
「図解気象・天気のしくみがわかる事典 きれいな衛星写真)+イラストでわかりやすく解説」(青木孝・監修、成美堂出版)
【気象現象別に事例を見たい】
「気象予報士試験標準テキスト」(新田尚・監修、オーム社)P.141〜185
【衛星画像を見たい】
「日本の天気と気象図鑑」(村田健史ほか、誠文堂新光社、2017年)
本を読むと分かった気になりますが、これだけでは頭の中に定着しません。自分でサブノートを作り、自分で理解したことを書き出してみます。これを毎日のように見返すことで、徐々に知識が自分のものになっていきます。
キーワードを隠して穴埋め形式にしておくと、復習時の効果が上がります。
ただし、サブノートを作ることが目的ではありません。自分が分かれば良いので、綺麗に作る必要はなく、ノート作成に手間をかけないようにしましょう(私はパソコンで作成していました)。
作図や読図は、自分だけの教材を作る
実技試験では図を書いたり、図を読みとる問題が出題されます。しかし、前線や等値線の解析は教材が乏しいこともあり、苦手とする方も多いと思います。
このような解析問題は自分でオリジナル教材を作成し、それを繰り返すことで手順を身体に覚え込ませます。
教材のネタは次のように準備します。
①過去問題から抽出する
これが一番てっとり早い方法です。
②参考書から抽出する
参考書には練習に使えそうな事例が載っていることがあります。
(例.「らくらく突破気象予報士かんたん合格テキスト 実技編」P.426〜435)
エマグラムは下記サイトから入手できます。SSIを計算してみたり、天候に応じた湿り具合や逆転層の状況を、日頃から見ておきます。
https://www.sunny-spot.net/emagram/
③スクールの資料を利用する
受験講座などで配布される資料を利用します。私はハレックスの実技講座(3日間講習)でもらった前線と等値線の問題(といっても、たかだか1〜2問ですが)を繰り返していました。
④気象庁資料から作成する
気象庁のホームページから、前線解析だったら「日々の天気」、風のシアーの解析だったら「ウィンドプロファイラ」の中から適切なものを選んできます。しかしこれは作成に時間がかかるので、あまりオススメはできません。
教材のネタをが入手できたら、問題と解答用紙をコピーして、自分だけの問題集としてまとめます(クリアフォルダーに入れるだけで十分)。
これにより苦手な分析問題を顕在化させることができます。製本された問題集の中に教材が埋れていては意味がありません。苦手なものだけをまとめておくというのが大事な点です。
自作の教材で定期的に練習し、試験日が近づいてきたらほぼ毎日実践すると効果的です。
間違いの記録をつける
過去問題を解いて間違いがあったときには、その答えだけでなく、なぜその答えが導き出されるのか、なぜ自分は間違えたのかを余白に書き込みます。
ここに自分の弱点が詰まった、「自分だけの傾向と対策」書になります。これが最も価値のある参考書になります。
自分の分身みたいなものなので、試験直前にもこれを読み返すことで落ち着くことができます。私は試験当日もこれを持ち込むことで精神安定剤になりました。
気象のロジックを整理する
気象現象には基本的なロジックがあります(「気象ロジック」は私の造語です)。
ある気象現象が発生するには、必ずその前提条件があります。その因果関係を頭の中で整理しておくことが大事です。
例えば次のようなものです。
【トラフと高度場の関係】
トラフが接近する→高度場が下がる
【温帯低気圧が発達する条件】
トラフ前面、正渦度の下方で上昇流が発生する
【上昇流が発生する条件】
上層に正渦度移流がある
下層で暖気移流&寒気移流がある
下層に暖湿気が流入する
このようなロジックは意識的に整理しないと、ただ問題演習をやっているだけでは身についていきません。
参考書にはこのような気象ロジックを整理したものがないので、少しずつ自分で作っていきます。
防災事項についてもある程度パターン化してまとめておきます。ただ覚えるのではなく、例えば「なぜ大雪が交通障害に結びつくのか」を考えながら覚えることが大切です。
【大雨】
低地の浸水、河川の増水や氾濫、洪水、がけ崩れ、土石流
【暴風】
木造家屋の倒壊、樹木の倒木、送電線の断線、交通障害
【大雪】
交通障害、着雪、雪崩、落雪
気象ロジックが頭の中で整理されていないと、試験合格後も天気図解析で苦労することになります。
実況で習熟する
予報士を目指すのであれば、毎日、天気図を見て実況をつける作業を行いましょう。
気象庁の職員でも、予報官として一人前の仕事ができるようになるには20年を要すると言います。
実況をつける作業自体は、予報士試験の対策にすぐに結びつくものではありません。だからどうしても後回しになってしまいます。慣れないうちは30分~〜1時間ぐらいかかるかもしれません。
しかし、実況解析を繰り返すことにより天気図を見るスピードが速くなることはもちろんのこと、年間を通した気象要素の変化を理解することができるようになります。
【実況をつける作業】
「実況をつける」というのは天気図(ASAS, AUPQ35, AUPQ78, AXFE578, FXJP854など)と画像(レーダーエコー、衛星画像(IR, VIS、水蒸気))を見て、気が付いたことを書き留めていくことです。
それぞれの天気図を見ていったら、次に天気図相互の関連を見ることが大事です。
例えばAXFE578で500hPaの渦度を見つけたら、850hPaの温度場、700hPaの鉛直流、850hPaで暖湿気の流入はあるのか、衛星画像で雲があるのか、エコーはどうかというように、鉛直方向の関係を見ます。
湿りを見るのであれば地上天気図で露点温度を見たり、850hPaや700hPaの実況図でT-Td<3の領域を見たり、850hPaの相当温位・風を見たり、場合によってはエマグラムを見たりと、複数の図で確認することができます。
また、最初に300hPaのジェット気流を見ておけば、今後の気圧系の動きをある程度予測することができます。
実行する
対策が出来上がったらあとはそれをこなしていくだけですが、スケジュールを立てると実行管理がしやすくなります。
試験までの時間を3つの期間に分けてみます。
Ⅰ期 弱点補強期間
Ⅱ期 科目別演習期間
Ⅲ期 全科目演習期間
Ⅰ期
不合格の原因分析で浮かび上がった弱点は、Ⅰ期でやっつけておきましょう。
弱点が多い場合はじっくりと時間をかけたいところですが、この手のものはやり出すとキリがありません。全体期間の3分の1を超えない程度にしましょう。
Ⅱ期
Ⅱ期からは問題演習です。2科目以上を受験する場合でも、実技、一般、専門と各科目別に演習をした方が、早く全体を舐めることができます。これにより前項の「自分だけの傾向と対策」が出来上がれば、2回目以降の効率が上がります。
ただし、試験日まで間がなければこの段階を飛ばします。
Ⅲ期
Ⅲ期は試験日を意識した時期です。各科目の内容を忘れないように全科目を満遍なく、毎日演習しましょう。
私はダレやすい性格をしているので、「今日は◯◯ページまでやる」というように、スケジュールを日単位まで落とし込んでいました。これには、達成度がひと目で分かるという効果もありました。
最後にアドバイス。合格発表から次の試験までは3ヶ月あまりです。徹底的な対策を講じるのに時間が十分かどうか考えましょう。時間が不足ならば、試験を1回パスして9ヶ月先の試験に照準を合わせるという案もあります。
最後に
学習途上では成果が上がっているのかが分からず、迷いが生じることもあります。他の参考書に手を広げてみたり、投げ出したくなることもあります。そんな時でも基本に忠実に従うことが王道です。
2018年の大相撲秋場所で、横綱・白鵬は41度目の優勝とあわせて、幕内1千勝を達成しました。
白鵬は15歳で日本にやってきた当時は細身で、どこの部屋からも声をかけてもらえず、モンゴルに帰国する寸前までいきました。
しかし力士になりたいという夢を聞き入れてくれる人が現れ、その後はご存知の通りの活躍を果たしています。その秘訣に特別なものはなく、ただ基本を繰り返すことだそうです。
白鵬を知る人は、「彼は当たり前のことをやっているだけ。ただ、基本が一番きつい。それを続ける意思の強さがある」と語っています(朝日新聞、2018.9.23)。
地道な努力こそが成果につながります。自分を信じて。
次回試験の合格をお祈りしています。

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